肝細胞がんは5大がんの1つ

――日本における肝細胞がんの現状について教えてください。肝細胞がんの患者さんはどのくらいいるのでしょうか。

図2. 肝細胞がんの原因

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図2. 肝細胞がんの原因

池田肝細胞がんは肺がん、胃がん、大腸がん、乳がんとともに5大がんの1つに数えられます。肝細胞がんで亡くなる患者さんは毎年3万人を超えているのが現状ですが、しかし、主要な原因となる肝炎ウイルス持続感染者に対して適切な治療を行うことが出来るようになったため、むしろ亡くなる患者さんの数がこれ以上多くなることはないと思います。

――肝細胞がんで亡くなる患者さんがこれ以上は多くならない、その理由を詳しく教えていただけますか。

池田それは診断や治療技術の進歩が大きく貢献しているといえるでしょう。特に、肝細胞がんの原因の大半がウイルスによる肝炎にあることがわかり、肝炎が肝硬変や肝細胞がんに移行する前からいろいろな治療を行うことができるようになったことが大きいと思います。また輸血や母子感染の減少で新たな感染者が減ったことも大きな理由です。
 肝細胞がんの原因の90%はC型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)です。アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、ヘモクロマトーシスなどのウイルスによらない慢性肝疾患が7%、原因がよくわからないものが3%です。具体的なデータを示します。2007年1月~08年3月の期間に虎の門病院肝臓病センターに肝細胞がんの治療のために入院した287人の患者さんでは、HCV感染が214人(74.6%)、HBV感染が44人(15.3%)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が15人(5.2%)、アルコール性肝障害が4人(1.4%)、いずれでもない患者さんが10人(3.5%)でした。

――なぜHCVや HBVのようなウイルスの感染が肝細胞がんの原因になるのでしょうか。

池田がんは正常細胞の遺伝子が変異し、異常増殖を引き起こした結果、起こることが知られています。肝細胞がんは、炎症による肝細胞の壊死と再生の繰り返しにより遺伝子の変異が蓄積し発がんに到る、活性酸素による酸化ストレスが遺伝子を変異させる結果生じると見られます。ウイルス感染やまれにアルコールが肝細胞を傷害し、壊死→増殖を引き起こします。
 肝炎が慢性化した慢性肝炎からある一定の割合で肝硬変に移行、さらに肝硬変の中から肝細胞がんへと移行します。虎の門病院の集計では、肝炎と診断された患者さんが15年以内に肝細胞がんを発症する割合は、HCVで14%、HBVで5%でした。さらに肝硬変と診断された患者さんではその割合は高くなり、HCVで52%、HBVで29%でした。

――慢性肝炎から肝硬変へ、あるいは肝細胞がんへの移行を防ぐ方法について教えてください。

池田最も多いC型慢性肝炎を例に説明しましょう。慢性肝炎の時期にインターフェロン治療を行ってHCVを排除できますと、肝細胞がんの発生率は10分の1になります。たとえ、HCVが排除できなくても、肝機能マーカーであるGOT/GPT値を正常値までに下げることができれば、がんの発生率を10~20%へと下げることが可能です。  
 しかし、一度肝硬変までに進行してしまうと、HCVが完全に排除できても発がん率が50%程度にしか下がらないので、できる限り早期に抗ウイルス療法、インターフェロン治療を受けた方が良いということになります。言い換えると、肝臓病は手を打つタイミングが早ければ早いほど、最終的に肝細胞がんで命を落とす事態から遠ざかることがきます。後になればなるほど、治療効率も悪くなります。治療の経済負担も膨らむことになります。


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