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ご両親が、がんになったら

どのような最期を迎えたいか日頃から本人と家族、医師でよく話しておきましょう

Q:

親が延命治療を望まないとき、どのように向き合えばよいでしょうか?

人工呼吸や人工透析、点滴をはじめとした人工栄養や輸血などが救命目的ではなく、患者さんの死期を延ばすために行われるとき、それは延命治療と呼ばれます。こうした延命治療を拒否したい場合、どんなことが必要なのでしょうか。

川越厚先生

答えてくださる方

川越 厚 先生
医療法人社団パリアン
クリニック川越
理事長・院長

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延命治療拒否(DNR)の判断は基本的に医師の役割

延命治療拒否(DNR)とは、「Do Not Resuscitate」の頭文字をとった言葉で、直訳すれば「蘇生するな」。元来は、患者さんに心肺蘇生など救命処置を施すかどうか、医師が判断を下すときに使われる言葉です。日本の法律では、患者さんの状態を診断し、どのような治療が必要かを決めるのは医師の役割。患者さんには治療内容を決める権限はないことになっています。

しかし、近年は尊厳死などの視点から、患者さんの権利としても延命治療拒否(DNR)という言葉が使われるようになりました。「容態が急変しても心肺蘇生をさせないでほしい」といった意思を前もって患者さん自身が示しておくことは可能ですし、実際に行われてもいます。ただし、これはあくまで医療機関や医師の自主的な取り組みで、法的強制力はありません。アメリカなどの場合、患者さんの延命治療拒否(DNR)の権利が法律で明確に規定されているので、延命治療を拒否したい場合には、法に基づいて書類が作成され、医師にはそれにしたがう義務があります。しかし、日本はまだそこまでの法整備には至っていません。

患者さんの気持ちは移り変わる

言うまでもなく、延命治療拒否(DNR)の意思表示は慎重に判断されなければなりません。健康なときに「延命されたくない」、あるいは「できる限りの医療が受けたい」とはっきり言っていたとしても、実際に死期が近づいたときに考えが変わる可能性は十分あります。またその意思表示には往々にして家族への気遣いが複雑にからんでおり、家族に迷惑をかけたくないばかりに「治療は受けたくない」と言う人もいます。

ある女性患者さんのケースでは、「病院の方が安心だから入院させたい」という娘さんと、「家で看取りたい」という夫の意見が対立していました。患者さん本人は「最終的には病院へ行きたい」と意思表示していました。しかしいよいよ死期が近づき改めて家族で話し合いをしたときに、私が患者さんに、「なぜ病院へ行きたいのですか」と尋ねると、「自分が家にいると家族に負担がかかり娘の持病が悪くなるのではと心配なのです」と答えました。これを聞いた娘さんは、「こんなときまで自分のことを考えてくれていたの」とびっくりし、涙をぼろぼろこぼしました。実は、ご本人は家にいたかった。でも娘さんを心配する気持ちが「病院へ行きたい」と言わせていたのです。最後の最後に患者さんの本音が聞けたことで家族の意見は自然にまとまり、その患者さんは夫と娘さんに見守られて自宅で穏やかに過ごすことができました。このように1つの真実をきっかけに考え方や家族の取り組みが大きく変わるということが、末期がん患者さんの在宅医療ではしばしば見られます。それだけ家族関係が濃密になり、それまで気づかなかった本音がぶつかり合うからだと思います。

患者さんと医師との信頼関係が一番大事

日本における延命治療拒否(DNR)は、権利や契約の問題ではなく、患者さんと医師の信頼関係の問題だと思います。普段から患者さんや家族が医師と十分に話し合い、皆が納得できる着地点を見つけていくことが大事だと思うのです。

私の場合は、在宅の末期がん患者さんとは、どのような最期を迎えたいかといった話を折に触れてするようにしています。そうした会話や患者さんの日頃の言動などから延命治療に対する考え方を汲み取り、家族の意向も確認しながら、最期のときに活かします。必要に応じて患者さんの意向を主治医の責任で書面にし、私の連絡先も明記して旅行などの際に持参していただくようにしています。こうしておけば旅先で容態が急変して救命救急センターに運ばれたとしても、センターの医師に患者さんの思いが伝わります。救命救急医が私に問い合わせをしてくれる場合もありますので、そういうときには患者さんが日頃どのような意思表示をしていたかを主治医の立場で伝えます。

また、遠方からかけつけた親族が延命治療を望むことも多々ありますが、その場合にも書面は有効です。ただし「治療を受けさせたい」という言葉の裏には、「愛する人の死を認めたくない」という気持ちがありますので、その思いも大切にしなければいけません。単に「本人の意思だから」とつっぱねるのではなく、主治医を含めてそこでもう一度よく話し合い、納得を得たうえで延命治療拒否(DNR)を尊重しましょう。

 
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Last Updated: 2015/5/13L.JP.OH.09.2014.0841