――病期が決定できたら専門医はどのような考えで治療法を決定するのでしょうか。
堀江大局的にいうと、病期が I 、II 期は外科療法・局所療法が行われ、進行するにつれ、薬物や放射線療法を中心とした全身療法が中心となります。病期に応じた治療法の選択の基本的な考えは、日本泌尿器科学会によってガイドライン(「腎癌診療ガイドライン」2007年版)としてまとめられています。
――I 期ではどのような治療になりますか。
堀江腎細胞がんの標準的な治療は手術治療です。がんのある腎臓を全て、もしくは部分的に摘出する方法があります。I 期ではがんの直径が4cm以下なら部分切除、4cmより大きくなると、腎臓すべてを摘出(腎摘出)します。基本は、がんのある腎臓を腎臓の上にある副腎や周囲に脂肪組織などもセットで切除する根治的腎摘除術(こんちてきじんてきじょじゅつ)です。リンパ節の切除(リンパ節郭清)を行うこともあります。
――腎全摘というと怖い感じがしますね。
堀江腎細胞がんの手術で全摘が行われてきたことには理由があります。腎臓は幸い2つあることから片方の腎臓を摘出することは、身体に対するダメージはそれほど多くありません。遠隔転移が起こっている場合でも腎臓を全摘した後に、手術や薬物療法を加えることによって、治癒したりがんの進行を抑えることができる場合が少なくないことも一因です。
でも摘出する範囲が小さい方が、患者さんにとって都合がよいことは確かです。近年は画像診断の技術が普及してがんが4cm以下の場合は全摘をせずに、腎臓の一部だけを切除する部分切除を行うことも増えています。
――状況が許せば、侵襲性が低い手術を選択してほしいという患者は多いと思います。開腹手術ではなく、腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)が行われることがあると聞きました。
堀江腹部に小さな孔を開けて、先端にライトとカメラが付いた内視鏡(腹腔鏡)を入れて行う手術です。病期I、II期の腎摘除術では手術の安全性(合併症の発生率)、患者生存率、非再発率において開腹術と比べて差がないことが確認されています。また、開腹術に比べ、出血量が少ないことや術後回復も容易でることなどから、患者さんにダメージが少ない術式であると思います。比較的小さい腎細胞がんでは、腹腔鏡下手術が現在標準的でしょう。ただし技術の習得に医師の熟練を要することから経験の多い施設を選ぶとよいでしょう。また10cmを超えるサイズの腎細胞がんは難度が上がるので、主治医と十分に相談する必要があります。また、腹腔鏡下腎部分摘除術については、まだ研究途上で標準的な術式が確立していません。
腹腔鏡下手術は確立した治療法ですが、患者さんの状態や病状、がんの位置によっては行うことができないこともあります。






